hiroshima
自分も顧みればすでに過渡期の人として過ぎてきた。自分の仕事というものはすでに行きづまってしまった。自分は仕事の上では今日まではいかなる人々をも恐れてはいなかった。また、そうしてやってきた。知惠では決して人に負けないと信じてきていたが、ここに唯一人自分にとって恐るべきは信也の存在だ。恐るべき存在は信也であった。信也一人だ。信也の芸術というものは、これは知惠とかなんとかいうものではなく、天衣無縫の芸術である。自分は天下唯一人信也に立ち向う時だけは全く息が切れる。生涯の自分の仕事も唯一人信也の仕事には全くかなはない、」といずまひをただして暗然たるかと思うと、かつて、かたはらの雑誌をとって、「この小説の冒頭の会話だけでも、すでに僕らにはこういう新時代の会話が書けない。」と僕に言っていたその作者の、がその後なにも書いていないのを嘆いていた。作業員は受付が迎えにきた時まで、何時間かの時間を、すさまじい必死で一人でしゃべりつづけていた。
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